【近江牛の地域資源認定】

ここ数日ニュースについて。

近江八幡市はふるさと納税の近江牛の全県化に反対しています。全県下とは、返礼品としての近江牛を県内19市町全てで扱えるようにすることです。

一見して、近江牛を県内共有の財産とするのに反対しているように見えますが、しかし実際は違います。

すでに、ふるさと納税の返礼品として県内では15市町が近江牛の精肉を取り扱っています。そのなかには肥育地に該当せず、本来ならふるさと納税の返礼品として扱うことが出来ない自治体も含まれています。

ルール上これはどういった問題があるのでしょうか?数年前、Amazonギフト券に代表されるように、ふるさと納税の返礼品には地域と関係のない金券で荒稼ぎする自治体がありました。そのため国はルールを改正して、地場産品に該当しない返礼品の取り扱いを禁止しました。

去年から事前審査方式に変わり、国が各自治体の返礼品リストを吟味して太鼓判を押す、という方式となりました。

ルール導入初年度の昨年は、チェックする期間がほとんどなかったため返礼品リストを挙げた全ての自治体に国は認可を出しました。

そして緩和措置として、県が認定した場合、その産品を全県で扱えるようにする指針も出されました。

つまりどういうことかと言うと、昨年と同じリストを出した場合、今年は肥育地に該当しない県内の自治体はルール上はじかれる可能性が極めて高いのです。

そのため、滋賀県庁は先回りして、現状でもルール違反があることは黙認し全県化を目指す、という多少強引な手法に出ました。

これに怒っているのが、近江八幡市や竜王町など、主たる肥育地に該当する市町です。近江牛の事業者への補助やブランドのPRは関係する市町が率先しておこなってきました。これまでの関係者の努力はどうなる、ブランドに投資してこなかった市町のタダ乗りを許すのか、ブランド価値が低下しないか、というものです。

一言でいうと、県は心情面・歴史面での肥育地への配慮を怠ったのです。

特に竜王町の場合、事業者のみならず商工会や行政も一丸となってPRに注力してきました。スキヤキプロジェクトと題して、スキヤキを無料で振る舞ったり、みんなで坂本九の『上を向いて歩こう』(英語版タイトル:Sukiyaki)を歌ったり、講談師の方に近江牛物語の講演会を行ってもらったり、と取り組みは多々あります。これは単に事業者だけでなく、関連自治体に広く関係する問題なのです。

特に懸念されている「近江牛のブランド価値の低下」とは、こういうものです。すでに取り扱いが行われている肥育地に該当しない市町の近江牛の返礼品について、ポータルサイトのレビュー欄では「がっかりした」や「美味しくない」といった指摘もされています。全国にすでに届けられている精肉では、一部で味を疑問視する声も出ているのです。

竜王町は、返礼品を上等なお肉の証明となる「認証近江牛」に限定すること、県が共同責任でブランドを損ねる事態が起きれば対処することなどを訴えています。

近江八幡市は国に紛争解決を訴える、という手段に出ましたが、総務省によるとこうした届けは全国でも初めて出されたとのことです。事態の経緯を見つつ、今後も鋭意、情報発信を行っていきます。