2024年5月30日
本日は一般質問が行われましたが、会議後に臨時の全員協議会が開かれました。
かねてから議論があった農村下水道の不納欠損処分について報告がありました。
農村下水道とは、竜王町の殿村地区(川守・岩井)と山中地区で採用されている集落独自の排水システムです。農村地域や小規模な集落における汚水を効率的に処理するためのシステムです。町全体の下水道システムとは料金の算定方法も異なります。通常の下水は従量単価(排水量に応じた料金)ですが、農村下水道は基本料金と人数割(その家に住む人の数)を足して計算するという独自の方法で料金を徴収します。これが民家であれば住民票の異動によって現状に合わせた料金を徴収できますが、問題となったのは事業所の場合の料金変動でした。
農村下水道のエリア内で営業している事業所の場合、計算はやや複雑になります。たとえば床屋では洗髪台の数に基づいて使用料が算定されたり、飲食店等ではトイレの便器の数に応じて排水量が計算されます。実際のメーターではなく、あくまで「どのくらいの排水設備を設置しているか」という見込みで料金を徴収するのが農村下水道の基本的な考え方です。
令和元年の定期監査において当時の貴多正幸監査委員の指摘で、殿村地区の農村下水道使用料に算定ミスがあったことが明らかになりました。本来は事業所が排水設備を増設した時点で役場は新料金を徴収する必要がありましたが、増設したことを確認せずに、旧の排水量のままで料金徴収を続けていました。このことは6年前比較的大きなニュースになったと思います。
徴収漏れが発覚し、「すでに時効となった分を除き過去5年分まで遡って」料金徴収を行われることとなりました。徴収漏れの総額は当時約230万円に上り、収金の残額は今月末時点で約160万円あり、ほとんど回収出来ていません。法に基づく督促を行わない場合、この金額は不納欠損(ふのうけっそん)として処理されます。これは徴収する努力をしても回収できないという判断のもと行われる処理で、実質的な町の財産の債権放棄になります。
しかしながら不納欠損は通常、納税者が死亡したり、行方不明であったり、差し押さえる財産がない場合に行われる処理です。殿村地区の事業所については、財産を有しており、行方不明でもないため、時効を延長せずに行うのは極めて異例なことです。
こうした異例の決定をした背景には役場の負い目があります。本日の会議では「基本的に役場の落ち度によって迷惑をかけたから時効を延長しない」という答弁が繰り返し行われました。もとを正せば確かに役場の落ち度であるのは間違いありません。計算ミスで本来徴収すべき料金を請求しなかったためです。しかし「すでに時効となった分を除き過去5年分まで遡って」徴収をするという事実からわかるように、計算ミスは6年前、7年前以上からすでに存在していました。
農村集落排水は昭和63年に竣工していますが、そこから令和元年に至るまでのほぼ全ての期間において、そもそも事業所の排水については適正な料金を請求できていなかったのではないかと思います。
本日の会議では今回幕引きを図る処分として、特別職の減給と「自戒措置(じかいそち)」による関係職員の処分を行うという説明がありました。自戒措置の意味は必ずしも詳らかではありませんが、通常これは首長や副首長が自らを律するために自らに課す処分のことをいいます。しかし自分の意志で自らの処分を決めることができないはずの一般の職員が率先して「自戒措置」をするというのはかなり危うい表現であると感じます。自らの信条に基づく切腹と、周囲の圧力で切腹をさせられるのでは、同じ腹切でも意味が違うからです。
処分について具体的なことはこれから、ということでしたがそもそも関連する職員が多すぎる場合のミスについては、トップだけが責任を取るという方法によって幕引きを図るべきだというのが私の考えです。
これは公務員という業界の話になりますが、たとえば一般の職員が一ヶ月減給処分になったとしても、それはたった一ヶ月のことではなく、退職金の算定にも影響を与える非常に重い処分となります。加えて処分対象となったという事実は、若手・中堅職員であった場合に今後の出世にも大きく影響をします。公務員というのは退職金も栄転も全ては長年の積み重ねによって成就する一方、一度の処分が大きく影を落とす世界です。しかもそれが自分のミスではなく、自分が職責を預かったタイミングで過去の名前も知らない誰かのミスの責任を取らされたらどうでしょうか。ガバナンスの崩壊や離職の引き金にもなり得ます。
話を戻すと、不納欠損という処分は議会の議決を必要としない処分です。本日の会議では「5月31日をもって債権放棄をします」という報告が議会サイドに行われた、ということで全ての幕引きが行われました。釈然としない想いで聞いていたのは私だけではなかったと思います。約160万円という未収金の回収に要した人件費などを考慮すると大きな業務負担になっていると理解しますが、未収金が生じた経緯と長年の緩慢な行政運営を思うと、これは金額以上に根深い話です。