【医療従事者等とは】

最近、自治体の首長のワクチン接種がニュースでよく取り上げられています。ここでは接種のガイドラインについて考えてみたいと思います。

ワクチンの優先接種には医療従事者「等」が含まれます。厚生労働省の2月17日のガイドラインでは「自治体等の新型コロナウイルス感染症対策業務において、新型コロナウイルス感染症患者に頻繁に接する業務を行う者」とされています。

これにより、保健所職員や接種会場で働く役場職員などが優先接種の対象に含まれます。

問題はここでは医療従事者「等」の範囲が、感染症患者と直接接する可能性が高い範囲に「空間的」に限定されていることです。たとえばバックヤードにワクチンの運び込み業務などを行う職員は、患者と直接接する機会が少ないとされ優先接種の対象となっていません。

実は今日まで日本の新型コロナ対応の法律は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」というものをベースに行われています。この法律では公務員には優先的にワクチンの優先接種をおこなう「特定接種」が定められています。自治体で陣頭指揮をとる市区町村長や感染対策の本部事務を行う職員も優先的に接種することになります。

しかし新型コロナワクチンは数に限りがあるため、国が新たに作成したのがこの医療従事者「等」というガイドラインでした。あくまで「ウイルスに接する可能性が高い人」という空間的な基準であり、「感染した場合、自治体の業務に支障が出る人」という「社会的」な視点で作成されていません。

そのため、国のガイドラインを厳密に解釈すると、今年度65歳未満である市区町村長や都道府県知事はワクチンの優先接種の対象となりません。

ではキャンセル分のワクチンの取り扱いはどうか?ということが問題の本質です。

接種会場で当日キャンセルが出た場合の対応は、厚労省のワクチン接種の手引に「それぞれの局面に応じた対応が想定される」とあります。ここでは例として、医療機関で当日キャンセルが出たら他の人に電話で呼び出しを行って接種してもらう、とあります。しかし現実的にワクチンの解凍後の保存時間も考慮し、2回目の接種日も来られるかの確約を取る必要があります。また、自治体が行う接種でのキャンセル分の取り扱いについてはそもそも例示すらないため、実質的に自治体の接種会場でのキャンセル分については個別の判断に委ねられているということになります。

茨城県の42歳の町長は「私も医療従事者」と発言しました。これは「等」に首長も含まれる(含むべき)という趣旨だと思います。本人の言い方が反感を買っているのかはともかくとして、私はその趣旨自体が間違っているとは思いません。首長が感染したら、副首長は必然的に濃厚接触者となり、最悪の場合、職務代理者すら不在になることが想定されます。

大切なのは混乱するワクチン接種への理解を求めていく姿勢と、前線でリーダーシップを発揮し続けることだと思います。そのため、感染を減らしていくことと、いま一番感染してはいけない人は誰なのかは分けて考える必要があると思います。